名工 ウィリアム・ワイオンが自身の所蔵用に1枚だけ特別に制作した試作ゴッドレス・フローリン。 通常の試作ゴッドレス・フローリンシリーズとは全く別工程の高圧力の打刻で仕上げられたと考えられる本品は、19世紀当時のコインとしては、他に類例のない強い霜降り状の、文字通りウルトラカメオというべきフロストの肖像面と鏡面状のフィールドを有している。また、そのコントラストにおいて、プルーフコインの雛形、手本品とも言うべきに恥じぬ外観を呈している。しかも、製造時の完璧な状態を保持するために、“Lunette“と呼ばれる2枚の半月状のガラスによって両面を挟み、薄い銀板によってフチを一周ぐるりと巻くことでコインを完全に密閉している。その効果もあってトーンが全く見られない稀有な状態で保存されており、白味の強いその銀色から、当時の通常コインにはない純銀製のコインである可能性が高いと考えられている。150年以上の経年の結果、ガラス面にかすかな曇りと微量の付着物が見受けられるものの、コインそのものは完全無傷であり、空前絶後の状態を今に残している。当時のロイヤルミントの首席彫刻師にはその職責に伴う特権として私的目的で試作コインを製造することが許されており、今回出品のゴッドレス・フローリンの他には1817年銘のスリーグレイセス・クラウン貨にも同様のガラス挟み込みの特製品が一枚だけ存在している。こちらはペンダントとして使用できるようにネックレス用の金具付きである。世界に唯一のコインを所有できるのは当然、世界に一人であり、今回はその絶好のチャンスである。(f ESC886 var. UNIQUE 唯一品)ⓇⓇⓇⓇ
両面ガラス張り FDC